小鶴幸一「スーパーポジションNBR」

小鶴幸一「スーパーポジションNBR」(1992年アクリル、キャンバス)

背景に故郷のぼた山

スーパーポジションNBR

織田廣喜美術館の収蔵品を紹介した春のコレクション展「夜と昼~対比から見る絵の世界~」も、盛況の中閉幕した。夜と昼をテーマとした作品の対比から始まり、さまざまな対比を基に広がる絵の世界を紹介した展示だったが、その中でも、ひときわ目を引いた作品が今回紹介する「スーパーポジションNBR」である。

真っすぐに、水平に引かれた線と、白と黒という無彩色の究極の対比の間に、有彩色を代表するような赤を入れて構成された世界が描かれている。

「曲線が自然の意志の象徴だとしたら、直線は人間の意志の象徴だと思うんです。」と作者の小鶴幸一さん(68)はいう。

1948年飯塚市生まれ、東京在住。嘉穂高校卒業後、武蔵野美術大油画科に進み、25歳でフランスのパリ国立美術大学に留学。18年間、ヨーロッパを中心に幾何学的抽象作品を発表し、43歳で日本に帰国した。

98年、故郷の飯塚で、初めてパリ時代からの作品と近作を展示した個展を開催。「スーパーポジションNBR」は、その時展示された中の1点で、その後、以前から織田廣喜と親交があったこともあり、当館に寄贈された。織田とは、高校生の時に初めて会って以来交流があり、鍋焼きうどんをご馳走になったり、若いころの苦労話を聞かせてもらったりしたという。

その独特の線と色の表現が生まれた背景には、故郷の「ぼた山」があった。

「太陽光にキラキラと輝くあの鋭角の黒い三角形が好きで、高校のグラウンドからよくぼた山を眺めていた。ピラミッドのように幾何学的でモニュメントのようにさえ思えた。」

選炭した後に残った岩石や質の悪い石炭を半世紀近く積み上げてできた飯塚の忠隈にあるぼた山は、現存するものとしては日本最大級。小鶴さんには、周辺の雄大な自然と、それを切り裂くように凛とたたずむ人工的産物の黒いぼた山の対比が美しく映った。今は樹木や草花が自生して緑があるぼた山の姿を、自然に媚びている感じがして残念に思っているそうだ。

その影響からか、小鶴さんの作品は、自然と人工物、直線と色面、二つの異なる要素が絶妙なバランスで、緊張をはらみながら、均衡を保っているように感じられる。

一歩外に出れば、色鮮やかな花と緑の美しい景色が広がる季節となった。鉱物は別として、自然界には直線と単色は存在しないというが、本当だろうか。陽だまりの中、曲線と直線、自然と人工物、同じ世界に存在していても決して混ざることのない二つの行方を探す。

いき急ぐ春を惜しみながら。

××

飯塚市役所新庁舎3階に、小鶴さんの描いた、王塚古墳的なカラフルな色彩と、炭鉱を象徴するような黒で構成された「スーパーポジション‐RNBV」が5月8日から公開される。本来、筑豊が持っていたはずのエネルギーを感じ取ってもらえたらと語る。

(織田廣喜美術館・藤嶋芳絵)

*西日本新聞朝刊 「美術館モノがたり 筑豊3館収蔵品から」平成29年4月22日(土)掲載分

自身の作品と一緒に写る小鶴幸一さん=3月に開催された「表層の冒険・抽象のアポカリプス」の会場(東京)

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