大塚抱節「なかよし」

平和な世界到来願う

「なかよし」(油彩、画布)

力強く、太く黒い線で描かれた二人の人間。どんな間柄なのだろうか。なにを話しているのだろうか。作品名は「なかよし」。描いたのは、書から油彩まで多彩な創作活動を続けてきた川崎町の表現者、大塚抱節さんである。1999年、本人によって当館に寄贈された。

大塚さんは29年、同町生まれ。教師時代に頼まれて書いたポスターの文字を批判されたことをきっかけとして発起。書をすべて独学で学ぶ。福岡県美術展に初めて出品した作品が入選、65年には独立書道展において準会員奨励賞を受賞し会員に推挙された。76年からは発表の場を海外にも広げ、米国のニューヨークやロサンゼルス、メキシコ、ドイツ、シンガポールと個展を開催した。

93年には大相撲の二子山部屋の看板や横綱貴乃花の化粧まわしの揮毫(きごう)を手掛ける。形にとらわれない自由奔放な作風で独自の世界を広げ、自らを〝表現者〟と名乗り、多くの作品を残したが、2018年3月13日、88歳で死去。

田川市美術館で子どもたちに作品の解説をする大塚抱節さん(2006年、田川市美術館撮影)

「人は皆、宇宙に生かされ、地球に癒され、そうして生き貫く使命に出逢う。神に感謝し、宇宙に低頭し、この地球のあらゆる生き物が、仲良しで平和に繋(つな)がることを祈らずにはいられないのです」という言葉を残している。

今回紹介した作品と同様に、2人の人が描かれた「なかよし」という作品を、大塚さんは他にも数点残している。

争いの先に、何が生まれるというのだろう。けんかや争いのむなしさに、人はいつ気づくのだろう。人は本来、愛や優しさにあふれた生き物だったのではないだろうか。この作品の込められた願いのように、地球上のあらゆる生き物が差別なく、同じ場所に並び、手をつないで、平和に暮らす世界は来るのだろうか。

「なかよし」は、自然とそんな気持ちがわいてくる作品である。

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織田廣喜美術館では、「原爆の図」などで知られる画家・丸木俊が描いた最後の絵本である「いのちの花」の原画展を2日から24日まで開催。福岡県の被差別部落に伝承されていた江戸時代の身分制度の中で起きた理不尽な事件の話を基に作られた絵本の原画の展示と、関連資料を公開し、改めて人のいのちの重さを問う展示となっている。

(織田廣喜美術館・藤嶋芳絵)

*西日本新聞朝刊 「美術館モノがたり 筑豊3館収蔵品から」

平成30年6月2日(土)掲載分

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