油彩画家、詩人 田代勝大さん(40) =直方市

美を感じる心 大切に

雨が小康状態になった昼下がり、しっとりとぬれた植木や花壇の間を縫って取材に訪れる。田代勝大さんの自宅の制作現場には、よしずから外の光がこぼれる。光が当たる位置にベッドがあり、その上に田代さんは横たわる。筋ジストロフィーとともに人生を歩んできた田代さんは、ベッドの片隅に置いている携帯電話に文字を打ち込んで詩を作る。

両親の仕事の関係で直方市にやってきたのは、16歳の時だった。生まれ育った岡山県倉敷市から家族と引っ越し、友達と会えなくなり寂しかった。少しずつ進行する病気を考えて養護学校(特別支援学校)に入ろうとしたがうまくいかず、特別な障害がある一人として見られるのが嫌だった、と当時を振り返る。

ちょうどそのころ、水彩やデッサンの勉強を直方市の画家川島のぶ子さんのもとで始め、油絵を描き始めた。日常生活の中で、これはきれいだなという気持ちや、とりとめのないことを感じて絵にすることに関心が芽生えた。そして、1995年から個展を開き発表をするようになる。

しかし、2011年の終わりごろから、パレットの上で混色するのが難しくなる。油絵を描く以外に他の方法で描くことができないか、と考えた。絵の下描きをしてそれをパソコンに取り込み、パソコン上で着彩をするなど試行錯誤が続く。ベッドの中で過ごす時間が増えると同時に、次々に浮かんでくる言葉を携帯電話に打ち込み、詩を作るのに没頭する。

かつて描いた油絵を見せていただく。絵には、青い背景に浮かぶ一輪の小さなバラの花が描かれており、「刹那」と題がつけられている。空の青さのように美しい色を絵の中に描こうと空をよく観察し、どういうところに引きつけられるのか考えたと言う。

setsuna

「刹那」 2000年前後、作家蔵

現在、詩を作る上で大切にしていることは、絵を描く上で心を引かれ、大切にしてきたことと全く同じということを教えてもらう。少しずつ動かなくなる身体で、いつか何も作れなくなったとしても、日常の中にある小さな変化を感じて美しいと思える心をいつでも保っていたいと語る。

20歳から始めた作品発表も、たくさんの人に会えることを励みに2年に一度の個展を続けようと考える田代さん。現在準備している個展「描いた詩」では、日常の心を奪われた美しい風景を、田代さんの目の代わりに6人の友人に写真を撮影してもらって、その写真から感じたことを詩にするというコラボレーションに挑戦する。

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田代さんの個展は、10月13日(火)~18日(日)、直方谷尾美術館で開催。最終日は午後4時まで。

(直方谷尾美術館・市川靖子)

*西日本新聞朝刊 「情熱の磁場」平成27年10月3日掲載分

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